舌がん治療記録 (10)手術前の気持ち/2
極端なはなしですが、健康な人だって、明日は事故で死ぬかもしれない。ガンで余命1年でも、これからずーっと健康で長生きでも、親が子供にしてあげられることは同じなんですよね。
自立して生きていけるようになる手助けをすることと、
明日さよならしても後悔しないよう、毎日いっぱい愛情を注ぐこと。
だと、私は思いました。
中身は人それぞれかもしれないけど、ためしに、明日死ぬと思って他人と接してみると、かなりシンプルに、自分にとって大事なものが見えてくるのではないでしょうか。
ただ、子供は、どんどん新しいことを覚えて成長するため、古い記憶はいつまでも事細かに覚えていられないと思います。
だから、口で色々伝えても、ごく一部しか覚えていないだろうな…と思って、一人に1冊ずつ、ノートを残そうとは思いました。そして、20歳までの誕生日ごとに、その年で理解できるようなメッセージを添えて、旦那に渡してもらうよう頼もうと。
お姉ちゃんは、いい子なんだけど、気が利かなくて誤解されそうだから、こういうとこに気をつけるんだよとか、もしいじめられても、あなたは世界で一人の大事な人間だから、自分を大事にしてねとか…心配しすぎやっちゅうねん(^_^;)
今はおかげさまで生き延びてるので、幸いそのノートは想像上のままですが。
もちろん旦那のことも心配で。
私がいなくなったらどうするだろうって思いました。
日頃は彼にボロクソに言われている私ですが、ああ見えて(?)私なんかよりずっと愛情深い人なんですね。
私は一人でも平気…というより、一人でたったか動き回る時間がないと息が詰まってしまう方ですが、彼は、買い物等もみんなで一緒に行きたがるし、休日に、家族と離れて趣味(釣りとかゴルフ)に出かけるのはつまらないそうです。(すごいね~。)
なので、一人はさびしいだろうなと思い、お葬式の時、私からのメッセージでも読みあげてもらおうかしらんと本気で考えましたよ。
「彼はこういう人なので、再婚しても、私は気にしないので、悪く思わないであげてくださいね。」なんて。
ひとりでベランダで洗濯物を干しながらそんなことを考えて、ポロポロ泣いたりして、とっても挙動不審だったでしょうね~(^_^;)
その時見た夕日はほんとに美しかったです。
部屋で子供とお絵かきしたり、団地の階段をとんとん下りると花が咲いてるとか、それだけのことなのに、クラクラするほど世界中が美しかったのを今でも鮮明に覚えています。
こんな宝物を手の中に持ってるのに、何を今まで不満や足りないものばかり見て文句を言ってたんだろう?と、自分に対して呆れたり。
とにかく、特殊なメガネをかけたかのように世界が変わった手術までの1週間でした。
おばあちゃんを道で見ても、
「この年まで元気に生きてるなんて、すごい!すごいよ!」
と尊敬の念がわいてくるし。
だって、私は子供や旦那に満足なこともしてあげられないで、親も悲しませて死ぬかもしれないってところなのに、ちゃんと長生きしてきた…それだけで100点満点じゃないですか。
それまでそんな風に思ったこともなかった。
ガンはもちろん大変なことだけど、数え切れないくらいのことを教えられて、いちおう元気に生きてる今になってみると、悪いことばかりじゃないな。
負け惜しみでなく、そう思います。
舌がん治療記録(11)入院準備 やること編 につづく→